1.モハメド・サリーム・メマン
(パキスタン 1963年生まれ 会社員(コンピューター部品製作) 滞在期間:約20年)
《良きイスラム教徒に最も近い日本人》
私は日本に来てから、私の足や、歩き方について意地悪な言葉を言われたり、失礼な呼ばれ方をされたりしたことは一度もありませんでした。そのことが毎日
の暮らしの中でどんなに気持ちを楽にしてくれるかは、そういう扱いを受けた経験がない人にはなかなかわかっていただけないでしょう。
また、こんなことがありました。日本についてすぐの頃、言葉もお金もわからないので、乗り物の代金を支払う時、両手を開いてお金をその上に載せて取って
もらうようにしました。正直な日本の人たちは、そこから必要な分しか取りませんでした。私にとっては信じられないことでした。
日本人の正直さ、契約を守ること、時間に正確であること、それから丁寧で清潔な暮らし方や伝統を守るところ、勤勉さなどはとても優れた資質だと思います。そして、自分の宗教以外の他の宗教についても敬意を払うところも素晴らしい点です。
私はイスラム教徒ですが、同じ宗教で世界を見たことのある人たちと話をする時に、みんなで共通する日本の人たちについての意見があります。それは、イスラム教国ではない、ノン・ムスリム・カントリーの中で、良きイスラム教徒として求められる資質を最も備えているのは日本人だと。もちろん生活の習慣は大いに異なりますが、日本の人たちの持つ良い人間性は、私たちが良きイスラム教徒として求められているものと重なるものです。
初めて日本を見た約20年前とは、安全さも人間も随分と望ましくない方向へ変わってきてしまい、残念に思っています。どうかそれらの貴重さを日本の人た
ちが認識して大切にして欲しいと願っています。(文芸春秋 8月臨時増刊号 「私は日本のここが好き」より抜粋)